2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて,世界からの訪問者への高度なおもてなしを目指した社会インフラのスマート化が急がれている.中でも,オリンピックの理念である「スポーツを通して心身を向上させ,さらには文化・国籍など様々な差異を超え,友情,連帯感,フェアプレーの精神をもって理解し合うことで,平和でよりよい世界の実現に貢献する」という目標を支援するため,地球規模での一体感を生み出すような視聴メディアに関する研究開発の重要性が高まっている.そのためには,グローバルなインターネットを前提とした映像・音響の視聴空間と視聴メディアの設計が必要である.
近年は,多くのスマートフォンに標準的に内蔵される収録機器を常時持ち歩くことが増え,収録された映像音声の情報はインターネット上で瞬時に伝達・共有・加工される状況が出来上がった.さらには,収録対象から映像素子に入力されたビットマップ情報と,ステレオマイクに入力された2チャネルの音声情報としてそのまま伝送し,受信側でそのまま再生するだけでなく,空間に存在する収録対象を3次元モデルとして解釈し複数の視聴オブジェクトに分解して伝送し,受信側ではこれらのオブジェクトを用いて空間を再合成するオブジェクト志向の方式が注目を集めている.これにより,ヘッドマウントディスプレイ(HMD),3Dテレビ,立体音響装置などの受信側のシステムの構成に合わせた柔軟な3次元表現が可能となるだけではく,他のコンテンツの視聴オブジェクトを別途受信し組み合わせることで,今までにない表現が可能になる.
例えば,音響においては,Dolby AtmosやDTS:Xなどの映画館やホームシアター,さらには個人向けモバイル機器を対象に,音のオブジェクトから3次元の音場を生成する立体音響システムが登場している.また,映像においては,複数の地点・角度から撮影された映像・動画から,撮影した空間に存在する3次元オブジェクトの抽出が可能であり,抽出した3次元オブジェクト情報を用いて,任意の視点(自由視点)からの映像の作成・再構築が可能となりつつある.
こうしたの流れに目を向けると,今後はインターネットで収録環境と再生環境を双方向で接続し,視聴オブジェクトを交換しながら,3次元表現を持つ情報空間をエッジヘビーコンピューティングまたはクラウドで計算処理することよって,映像音声が作り出されていくことになるであろう.映像と音声のオブジェクト化が融合することで,従来の配布型コンテンツビジネスを超えた,新しい次元のインタラクティブなオリンピック・パラリンピックの視聴形態などこれまでにないビジネス領域や,これまでにないディジタルメディアを用いた表現方法などを開拓・開花させることが期待される.
7月29日(金)に開催するSDMワークショップでは,以下の関連トピックスに関して,意見交換を行う.また、7月30日(土)に開催するスマートライフアイデアソンは、ビルとビルに関わる様々な装置を対象としてハックをするイベントである.ユーザーインタフェース、分析アプリケーション、パーソナルデバイス、空間センサーなどを短期間で開発して、アイディアを深めることを目標に、プロフェッショナルだけでなく学生や趣味人が集まる.
10:00 - 10:30 | 受付開始 |
10:30 - 11:00 | 開会挨拶 |
11:00 - 12:00 | 説明&チームビルディング |
12:00 - 13:00 | 昼休憩 |
13:00 - 16:00 | アイデアソン |
16:00 - 17:00 | 発表 |
17:00 - 18:00 | 審査発表、閉会挨拶・次回予告 |
18:00 - 20:00 | 懇親会@I-REF棟 |
江崎 浩(東京大学 情報理工学系研究科教授)
昭和 38 年生.昭和 62 年九州大学・工・ 電子修士課程了.同年 (株) 東芝入社.平 成 2 年米国ニュージャージ州ベルコア社. 平成 6 年コロンビア大学・客員研究員.平 成 10 年東京大学大型計算機センター・助 教授.平成 13 年同大学大学院・情報理工学系研究科・助教授.平成 17 年同大学大学院・同研究科・教 授,現在に至る.博士 (工学,東京大学).MPLS-JAPAN 代 表,IPv6 普及・高度化推進協議会専務理事,WIDE プロジェ クト代表,JPNIC 副理事長.
砂原 秀樹(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)
インターネット上に分散した人間の行動、ネットワークセンサ、自動車、「物」が生成する情報から「知識」を構成することに興味を持つ.
三谷公二(NHK放送技術研究所 副所長)
1987年NHK入局。放送技術研究所において,画像処理,放送用テレビカメラの研究,ハイビジョンカメラの小型化,スーパーハイビジョンカメラの開発などに従事。2010年から渋谷にある放送センターで放送設備の開発・整備を担当する技術局に所属し,スーパーハイビジョン実用化システムの開発を担当。現在,スーパーハイビジョン開発部部長として、2016年のスーパーハイビジョン試験放送の開始に向けて放送設備、コンテンツ制作設備の整備を推進している。
谷川 智洋 (東京大学 情報理工学系研究科 特任准教授)
1997年東京大学工学部産業機械工学科卒業.1999年同大学大学院工学系研究科機械情報工学専攻修士課程修了.2002年同大学博士課程修了.同年通信・放送機構研究員.2004年組織変更により情報通信研究機構研究員.2005年東京大学先端科学技術研究センター講師.2006年同大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻講師,現在に至る.イメージ・ベースト・レンダリング,複合現実感に関する研究に従事.博士(工学).
川添 雄彦(日本電信電話株式会社 サービスイノベーション総合研究所 所長)
1987年日本電信電話(株)入社。通信網第二研究所にて、衛星通信システム、パーソナル通信システム、無線回線制御技術、誤り訂正技術の研究開発に携わる。2003年サイバーソリューション研究所第一推進プロジェクトにおいて放送と連携したブロードバンドサービスの研究開発プロジェクトのディレクタ/主幹研究員.ARIBサーバ型放送作業班副主任としてARIB-B38の策定に従事する。
塚田 学(東京大学 情報理工学系研究科 特任助教)
1982年、京都生まれ.2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業.2007年慶應義塾大学政策・メディア研究科修士取得.2007年よりフランス・パリ国立高等鉱業学校 (Mines ParisTech) ロボット工学センター博士課程在籍および、フランス国立情報学自動制御研究所 (INRIA)のIMARAチームにて研究員として勤務.2011年博士号取得. 現在は、東京大学 大学院 情報理工学系研究科の特任助教.2014年よりWIDEプロジェクトのボードメンバー. 自動車の情報化など、次世代インターネットIPv6における移動体通信に取り組む.
関根 聡(ヤマハ株式会社 研究開発統括部 第1研究開発部)
1988年ヤマハ(株)入社。研究開発部門で立体音響技術、コンピュータグラフィック技術、電子楽器や音響機器、通信カラオケなどのエフェクタや会議システム用エコーキャンセラなどの音響信号処理技術開発に携わる。2015年より第1研究開発部空間音響グループマネジャーとしてヘッドフォンおよび多チャンネル再生系による立体音響システム、アクティブ騒音制御技術等の開発及び事業展開を推進している。日本音響学会会員。
藤井 彩人(日本テレビ放送網株式会社 技術統括局(兼)社長室企画部)
2001年日本テレビ放送網(株)入社。チーフアートディレクターとしてバラエティ番組やスポーツ中継の各種CGデザインを担当すると共に、VR関連の研究開発に携わる。 映像効果の制作例を紹介するウェブサイト「ayato@web」主宰。